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荻田幸子 氏(当事者)(神奈川県中途失聴・難聴者協会、小田原市聴覚言語障害者福祉会、要約筆記サークルこゆるぎ)




「体験から思うこと」


 皆さま、こんにちは。荻田と申します。私は神奈川県中途失聴・難聴者協会、小田原市聴覚言語障害者福祉会、そして要約筆記サークルこゆるぎの会員です。よろしくお願いします。
 私は、22年前に突然失聴しました。病院の診断は突発性難聴で原因は不明。「多分、体の疲れとストレスでしょう。聴力の戻る見込みはありません」と言われました。精神的にもすっかり参ってしまい、家から出ない日が続きました。半年ほど過ぎた頃、右側に鼓膜を張りつける簡単な手術を受け、右側に補聴器を使っています。現在、聴覚障害二級です。

〈コミュニケーション方法〉
 家族は、長男夫婦と中学生の孫が二人で全員健聴者ですので、日常生活では補聴器でコミュニケーションをとっています。私が聴こえなくて聞き返すと、手話、身振りや、もう一度ゆっくり話してくれます。福祉会の役員会の時は、OHPを見て、手話を見て、補聴器で。私達の役員会は、ろう者と難聴者が一緒なので、手話通訳者がろう者の手話を読み取って、要約筆記者がOHPに書く。それを難聴者が読むので、とても時間がかかります。また会議の時は、ノートテイクを読み、時々手話を見て、補聴器で聴く。講演会の時は、補聴器とOHP、少し手話等です。私は難聴者ですが、手話も少しは分かりますし、2年前から補聴器がデジタルにかわったので、良く聴こえる時もあります。ですからトータルコミュニケーション方法だと思います。

〈要約筆記とのかかわり〉
 初めてOHPを見たのは、福祉会の役員会でのことでした。 「うわー!すごい!」とびっくりしました。 聴こえない、手話も分からない当時の私にとっては、画面に書かれている文字が全ての情報でした。とても嬉しかったのを覚えています。パソコン要約筆記を初めて見たのは、東海大学での人工内耳の説明会でした。人工内耳に関心を持っていた友人と二人で参加しました。文字が大きくて、読みやすくて、文章も箇条書きになっていたので良く理解できました。余談ですが、その友人は昨年、人工内耳の手術を受けすっかり明るくなりました。
 何年か前に「パソコン要約筆記が付くから」と誘われて、議会の傍聴に行きました。
大がかりな準備でびっくりしましたが、二階席で、スクリーンの文字が読める席に座って、補聴器のボリュームを上げて声を聞きながら、パッパッとあがってくる画面を一生懸命読みました。1時間くらいでしたが、終わった時はしばらく目を閉じてじっとしていました。仲間の難聴者とコーヒーを飲みながら、”目が疲れて頭がボーっとして内容は何だっけ?” 皆同じ思いでパソコン要約筆記を見た体験をしたけど、情報保障にはならなかったようです。難聴者は高齢者が多いので、読むのが大変です。少しでも音が入っていれば未だ良いのですが、文字が情報の全ての人はとても大変だと思います。

〈その他〉
 地域のピアカウンセラー打合せ会や小田原市障害者福祉協議会の理事会などの時は、ノートテイクをしていただきました。声が小さくて聞き取れないので、書いていただいて助かりました。私自身要約筆記について何も分かりませんでしたので、神奈川県の養成講習会を見学したり、お手伝いをしながら勉強させていただきました。
 講演会、講習会等で講師の話している言葉を全文文字通訳することができれば、それが理想ですが、私は不可能だと思います。講師の雰囲気は肌で感じるものだし、声の調子とか、話し方などを文字にかえて伝えることはできないと思います。私の場合は補聴器で聴きながら、時には手話も見ながら、要約筆記を読みますので、内容をきちんと要約して、ぶれないで伝えて欲しいと思います。どうしても話し手の方が速いですから、要約しないとどんどん遅れてしまいます。難聴者は皆それぞれ聴こえ方が違いますので、難しい問題だと思います。

〈提言として〉
 私が聴こえなくなって22年経ちました。普通に社会参加をするのには、まだまだバリアは高いです。聴覚障害者、特に難聴者に対する理解を深め、文字による情報保障制度が確立されることを提言します。そして、多種に渡る難聴者の要望に対応できるように、筆記者の皆様には、ご自分の得意とする分野をしっかり身につけていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。