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利用者を交渉弱者にしてしまう要約筆記の例
利用者を交渉弱者にしてしまう要約筆記の例 ある大会の企画会議です。 聴覚障害のAさんは、要約筆記で会議に参加しています。 Aさんは、前から話を聞きたかったろう者を講師に呼んで欲しいと要望を出しました。
Aさんは、この要約筆記を見て考えました。 「事務局は、私の要望を分かってくれたのだろうか?」 「もう一押し、お願いした方がいいだろうか?」 事務局は、以下のように話していた可能性があります。
ケース@の事務局は、「なんとかAさんの希望を反映させたい」と思っています。 ケーズAの事務局は、「通訳謝金は出したくない」と最初から思っています。 現在の要約筆記のテキストは、「話された逐語文」⇒「要約文」と要約筆記者の視点で「要約の技術」の練習のために作成されています。 しかし、利用者は、「要約文」から「話された内容」を推測しているのです。 つまり、要約筆記の練習方法と聴覚障害者の利用方法は逆方向なのです。 要約筆記は、「要約文」だけを見て「聴者と同等のコミュニケーションができるか」という視点で要約文を検証しなくてはいけません。 しかし、現実には、上の例のように、要約文から元の話しの内容「全て」を推測することはたいていの場合、困難なのです。 聴者ならば自然にしている「微妙な表現から話者の心理を推理する」が要約文ではできません。 このため、上記のような「交渉」の場では、要約筆記利用者は、弱い立場に置かれてしまいます。 聴者ならば得ることができたはずのチャンスを逃すこともあるだろうと思います。 これに対する良くある反対意見は、「相手の微妙な心理」が分かるように要約すれば良い、 つまり、「要約技術の問題」であるということです。 しかし、なぜ、そこまでして筆記者が聴覚障害者の判断に干渉する必要があるのでしょう? 単に全文入力すれば、聴覚障害者が、そのような推定も含めて自己決定できるのですから。 |